
1:「棚づくりは面白い」——人に届く仕事を選んだ日
青山ブックセンターの山下店長にお話をお伺いしました。

書き手:うらちゃん(にしうら)
——本日はお時間下さりありがとうございます!
去年の出張の際にも立ち寄らせていただきました。
まずは普段されているお仕事についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
山下:青山ブックセンターの店長をしています。
従来の店舗であれば、店長がシフトを作ったり、レジに入ることが多いと思うんですけど、自分の場合は棚づくりを中心に、イベントを企画したり、出版を担当したりと、外部に向けたことを色々やっています。
——なるほど。
棚づくりについては後ほどお伺いしたいのですが、青山ブックセンターさんにはアルバイトから入られて、店長になられたという記事を見ました。
「どうやったらそうなるの?」というのが率直な感想でして…どういった経緯で店長になられたのかお伺いしてもよろしいでしょうか?
山下:確かにそうですよね(笑)
初めは、週3のアルバイトをしていました。
それこそ検品とか返品とか、あとは掃除しかしていなくて、違うところで夜勤のアルバイトをしながら働いていました。
本腰いれて青山ブックセンターでやっていこうと思ったのは、3.11がきっかけです。
夜勤で働いていると、お金は入ってきたけど、仕事で何も残していないという感覚がありました。
でも、東日本大震災が起こり、何か残っていくものに関わりたいという考えになって、そこからずっと週5入ってというところですね。
そのころ、ちょうど会社も子会社から親会社に合併したりとか、社員の人がどんどんいなくなっていくタイミングだったんですよ。
自分が優秀だったからというわけではなく、仕事がどんどん回ってきて、一つずつやっているうちに、当時の店長が体調を崩されて。
偉い人から「社員か店長、どっちがいい?」と聞かれて、当時アルバイトだったんですが、「店長ならやります」と、生意気な返事をしてしまいました。
——3.11がきっかけだったんですね。
もちろん山下さんの働きからの抜擢だったとは思いますが、いきなり店長とは。
山下:上の人に提案してもらったんですけど、「お前が店長か」とは、数ヶ月くらい言われていました(笑)。
当時の方が色々大変でしたが、アルバイトだったので言いたいことを言ってやりたいことをやらせてもらっていました。
イベントは月に20本くらい開催していましたね。
今では考えられませんが、残業して帰って、ご飯を食べて寝るだけ。
休みの日はほとんど寝ていました(笑)。
——もう店長さながらのお仕事ですね!
山下:そうですね。
店長になる前に、リニューアルのタイミングがあって、そこで大きくレイアウトを組ませてもらいました。
面積が縮小したこともありましたが、アルバイトの立場でいろんな体験をさせてもらっていました。
——責任重大ですね。そのときから棚づくりを担当されているんですか?
山下:ずっと棚づくりは担当しています。
その時は多くのジャンルの棚を動かしていて店内を走り回っていました。
お店がちょうど揺れ動いていた時期に居られたというのは、個人的にはとても大きかったです。
色んなジャンルに対して全部知識があったわけじゃなかったので、文芸やデザインの棚は先輩方が作った棚の原型が残っていたのでゼロからではなかったのが救いでした。
過去の実績が残っていたおかげで、それを参考にしながら取り組むことができたんですよ。
——店長になるなら残りますという話もありましたが、どういった部分に書店員の魅力を感じていますか。
山下:やっぱり、棚づくりは一番面白いですね。
自分が並べた本が、目の前で手に取られていく。
それを実感できるのは何事にも代えがたいです。
もちろん本自体は自分が書いたものではないですが、ちゃんと“届いている”という実感があります。
あと、深い知識ももちろん必要なんですけど、それ以上に興味関心を持ち続けることが大事だなと思います。
新しいジャンルや流れもどんどん入ってくるので飽きる暇なくそこに携われるのはいいなと思います。
ただこれって、本当に恵まれたことなんですけど、やっぱり著者との距離も結構近かったということも大きいですよね。
新しい著者さんと出会って、選書フェアやイベントなどでご一緒する機会が多かったです。
僕が入る前からそういう文化があったので、青山ブックセンターだからこそだと思います。その後新刊が出る度にまたご来店頂いたりしてと、そんな風につながっていけるのは嬉しいです。
——繋がりというところから、お客さんとの関わりも少し独特ですよね。
毎月、昨対比をつぶやいていらっしゃるじゃないですか。実際のユーザーさんからの反応はいかがですか。
山下:昨対比に関しては、もちろん利益も大切ですがお店が今どういう状況かお知らせする機会と捉えています。
どんなインタビューを見ても「出版不況」と言われていましたけど、そう言っていても何も変わらない。
ありがたいことに、順調に売上が昨年より伸びていたんで、そういう書店もあるよというのを知らせたかったということがあり数字を出すようにしたんです。
昨対が99%だった月には「なんで言ってくれなかったの!」と声をかけてもらったこともあって、やっていてよかったなと思いました。
元気がないんだなというときも分かるし、それなりに元気だということも分かってもらえる。
お店の動きを見せられるのはいいことかなと思います。
——棚づくりについても伺いたいのですが、実は私も買うつもりのなかった本をつい買ってしまって……なにか意識されていることはありますか?
山下:もともと僕自身がそこまで知識がなかったので「お客さまの方が詳しい」という前提でやってきました。
そんなお客様にどう届けるか、というのは常に意識しています。
おっしゃってくださったように、違うものを買いに来たのに「これも気になる」と思ってもらえるような本を置けたらと思っています。
偶然というより、書店員として「こうなったらいいな」という仕掛けを込めて棚をつくっています。
——それが、ここに来たくなる理由なのかもしれませんね。
山下:土地柄もあると思うんですけど、新しい作品や新しい著者に出会いたいということもあって、足を運んでくださっているのかなと思っています。
なので、そこはうまく届けられたらなと思っています。
——私自身も基本的に本って、Amazonとかで買っちゃうことが多いんですよ。
でも、今日は青山ブックセンターさんで目に入ったものを買いたいなと思いながら来ました。
山下:ありがとうございます(笑)。
「渋谷と表参道の間」というと響きは良いんですが、実際は駅から少し遠いんですよね。
それでも来てくださる方には、「来てよかった」と思ってもらいたい。そういう気持ちはずっとあります。
うちはある程度規模があるので、「なんでこれがないの?」と言われることもあります。
売れ筋の本も置きつつ、読んでほしい推したい本もちゃんと置く。そのバランスはいつも大事にしています。
——売れ筋の本も置いてはいるけど、読んでほしい本も置いているような?
山下:そうですね。
そこのバランスの良さがうちの良さでもあるなと思っています。