
環境・地域への取り組み
期日前投票制度の目的
木村石鹸では選挙投票に行きやすくなるようにと、「期日前投票制度」を設けてます。 社員は期日前投票のために半日特別休暇を取得することができる制度です。 この文章は、なぜ、こんな制度を導入しているのか、その目的や意図について社内に流した文章です。

書き手:キムショー
選挙に行く人が増える方がいい。僕は単純にそう思っています。
木村石鹸には「期日前投票制度」というものがあります。
選挙の期日前投票のために半日特別休暇が取得できるという制度です。こんな制度を導入している会社はほぼないと思います。
なぜ、わざわざ会社がこんな制度を導入しているのか?
多くの人がちゃんと選挙に行ったほうが良いと思ってるからです。
ここ最近の選挙では毎回投票率の低さが話題になります。特に20代の若い人たちの投票率の低さが問題視されています。木村石鹸もこの10年で若い人が増え、20代の社員の割合も多くなっています。
こういう状況の中、会社としても少しでも選挙に関心を持ってもらおう、選挙に行きやすい環境が作れないか、ということでこのような制度を設けました。
会社は事業活動を通じて社会をよりよくする、人を幸せにする、そういうシステムだと僕は思ってます。なので、ただ売上を上げるとか儲ける、ではなく、何かしら社会への貢献を常に考える必要があると思うんです。
選挙の投票率を上げることも、僕は社会をよりよくしていくための大きな一つの機会だと思っています。
そんなことを会社が後押しする必要はない、って声もあるとは思いますが、そんなこと言ったら、じゃあ仕事に関係しないこと、売上や利益に関係しないことは一切会社はサポートしないでいいのかって言うと、全然そんなことはないですよね。
若い人たちの中には、選挙なんて面倒臭い、行っても行かなくても一緒、行っても意味がない、そんな風に思っている人もいるんじゃないでしょうか。
でも、選挙権って、実は凄い権利なんですよ。歴史を勉強すると分かりますが、今、当たり前のように成人男性、女性が選挙権があるって状況は、実はかなり最近に整ったものです。木村石鹸は今年100周年ですが、100年前には、日本では女性には選挙権はありませんでした。100年前でやっと25歳以上の成人男子の選挙権が与えられた。そういうレベルです。それ以前は選挙権は男性のみ、しかも一定額の税金を納めている人、つまりお金持ちの男性にしか選挙権はなかったのです。
そして、それよりも昔になると、そもそも選挙権なんてものは一般の人々にはなかったし、選挙の仕組みもなかった。民主主義ではなく、封建制とか軍事政権が普通です。今、皆さんが持ってる選挙権って、世界的に見ても、実は少数なんですよ。
選挙権がないという状況は僕も経験したことがないので、分からないのですが、でも多分、めちゃくちゃ厳しいと思うんです。
十数年前でしょうか、「アラブの春」で民主化したばかりのチュニジアに行きました。街角に小さい本屋さんがあったのですが、そこに大人も子供もものすごい数の人が群がっていて、貪るように雑誌や本を読んでました。日本では本屋の数はどんどん減ってて、本屋に人が溢れかえる光景なんて、ほぼ見ないと思います。それは僕にとっても結構衝撃的な光景でした。チュニジアでは、それまで言論統制も厳しく、出版物などにも厳しい規制があって、自由に本や雑誌は読めなかったのです。だから、とにかく自由に本を読めるということがチュニジアの人たちにとっては凄いことだったんですね。チュニジアは憲法を変えて、民主化を果たしたから、やっとこういう状況を勝ち取った。(民主化後も、色々問題は起きていて、僕が滞在した次の月にテロが起きて、僕も行ってた博物館で民間人がかなり殺されたりしました)
今の日本の社会とか民主主義にも問題は沢山あるし、変えないといけないことは山ほどあると思います。でも、それを変えようと意思表明が出来るとか、そもそもここが駄目だ、あそこが良くないと批判するとか、そういうことが普通に出来る、ということが実は凄いことで、これは民主主義の力で、少しずつ少しずつ良くなり、そういう状況や環境、権利を作り上げてきたものです。民主主義や選挙制度があるから変えていけたものがかなり多いと思います。
ちゃんと勉強すれば、今、自分達が持っている選挙権というものが、どれだけの苦労や大変さを持って実現されてきたものかは分かります。
そして、少しでも自分達の未来の暮らしや社会が良くなって欲しいと考えるなら、今の社会やくらしに不満があって、もっとこうなればいいのに、ああなればいいのにと考えるなら、とにかく選挙には行くべきです。自分達で未来を変えることが可能な権利を持っているんですよ。世界の多くの国では、そもそもそんなことは不可能。国民が自分達の意思を反映させるなんてことが、そもそも不可能な国が沢山あるんです。
トーマス・マンの「魔の山」に「政治を軽蔑するものは、軽蔑すべき政治しか持つことができない」って言葉が出てきます。
今の日本の状況って、だんだんこの言葉に近づいてるなと思います。投票に行かない、選挙なんてどうでもいいと蔑ろにする行為は、「政治を軽蔑」していることと同じです。そして、そういう人が増えれば増えるほど、政治は「軽蔑すべき」ものになっていく。政治家の腐敗とか暴言とか汚職とか、色々ありますけど、結局、そういう政治状況を招いているのは、政治に無関心な国民の方だったりするんじゃないかと。そして「軽蔑すべき政治しか持つことができ」なくなったら、苦しむのは国民自分達自身です。
木村石鹸では、特定の政党を支持しているわけでもないし、何かしらの思想を強要することもしません。
でも、「政治」そのものには、もう少し関心を持って欲しいなと思っていますし、皆にはちゃんと選挙に行ってもらいたいなと思っています。
「期日前投票制度」はあくまでも手段なので、別にこれが沢山の人に使われたいとか、使われないといけないなんてことは思ってはいません。でも、選挙には行って欲しいなと思っています。