
インタビュー
「おなかだけでなく心を満たす」―老舗駄菓子屋の温かなモノづくり哲学
木村石鹸では、2020年から本店オンラインストアの特典として、近隣のメーカーさんのお菓子をご注文いただいた商品と一緒にお届けしています。今回は、ご協力いただいているチーリン製菓さんを訪ね、お菓子の魅力についてお話を伺いました。
チーリン製菓について
弊社から歩いて15分。ご近所さんです。
子ども向けの駄菓子を多数取り扱う。チョコレート、ラムネ、ガム、ミンツがメイン。
副社長 福井さん、経営企画室 小菅さん、副社長 前田さん
木村石鹸がお菓子を同梱し始めた理由
お菓子を同梱し始めたきっかけは、当時のEC担当者が、家事や掃除は家族や生活のために行うことが多い一方で、自分へのご褒美やちょっとした息抜きができる時間を作れないかと考えたことにあります。
また、木村石鹸本社がある大阪・八尾市は、実はお菓子メーカーの多い街。「八尾にはこんな素敵なものがありますよ!」という思いも込めて、地元のお菓子をお届けしています。
──みなさま、今日はお忙しいところお時間取っていただきありがとうございます。
福井さん:いえいえ、せっかくのご縁ですからご協力できることはさせてもらいます。
よろしくお願いします。
──よろしくお願いします。まずはじめに、チーリン製菓さんの簡単な紹介をお願いできますか。
チーリン製菓の始まり
福井さん:はい。弊社は昭和3年に大阪市西成区で創業し、当初はモナカの皮の部分の製造から始まりました。
メインでインタビューに答えていただきました、福井さんです。
いつもお世話になってます!
──創業は大阪市だったんですね。
福井さん:大阪はかつて「天下の台所」として栄え、難波を中心に道頓堀などの大きな川や水路を利用して、各地からさまざまな産物が集まってきました。
特に大量に運ばれてきたのがお砂糖で、大阪市にはお菓子屋さんがたくさんあったんですよ。
その後、販売場所が駄菓子屋からスーパーに変わったことで、供給量を確保するため、大阪市内から東大阪市や八尾市に工場を移転するメーカーが増えました。
弊社も昭和41年に八尾市へ移転し、現在は糖衣チョコ、糖衣ラムネ、糖衣ガムなどの駄菓子を取り扱っています。
チーリン製菓さんの商品
福井さん:駄菓子にはっきりとした定義はありませんが、私たちは「親しみやすいお菓子」を駄菓子というふうに捉えています。
──たしかに、駄菓子って親しみやすい存在ですね。子どもの頃から手に取っているからでしょうか?
福井さん:そうですね。実は「チーリン製菓」の社名は諸説あるのですが、子どもたちが自分のお小遣いで買えるような低単価の駄菓子を作っていくということで、「チャリンチャリン」という小銭の音から取ったと言われているんです。
──へぇ~、小銭の音が社名の由来なんですね!チーリンさんのお菓子は大体どれくらいの価格なんですか?
福井さん:一番安いのが10円で、ほとんどが10円〜40円です。
ゴーゴーガム 40円/個
低価格で「心を満たすお菓子」を作る工夫
──10円〜40円という低価格を実現するためには、厳しいコストの制約があるかと思います。その中で子どもたちが「ほしい!」と思う商品を作るために、どのような工夫をされているのでしょうか?
福井さん:そうですね、低価格を実現するには、どうしてもコスト面がネックになります。あの…私の給料を少なくするとか(笑)、そんなことはなかなか続かないんで、やっぱり従業員全員の努力で実現してますね。
私たちが目指すのは、「おなかを満たすだけでなく心を満たすお菓子づくり」です。食べて終わりじゃなくて、お菓子が入っているパッケージで遊べるようにしてみたり、楽しみ方をプラスすることで、子どもたちに満足してもらえるお菓子を提供したいと考えています。
──昨年、パッケージの部門のコンテストで受賞されていましたね!
福井さん:はい、おかげさまでありがとうございます。
「おうちで駄菓子屋さん」という商品で、「日本パッケージデザイン大賞 銀賞」をいただきました。
おうちで駄菓子屋さん
チーリン製菓のお菓子がたくさん入った駄菓子セット。
屋台型の陳列台に並べて遊ぶことができます。
福井さん:他の受賞者の方はすごいデザイナーさんとか代理店さんとかばっかりで、そんなとこにあんなダンボールのもので貰ってええんかなぁって感じでした。
かっこいい~~~~~~~~~~~!
──「おうちで駄菓子屋さん」はどんな商品ですか?
福井さん:パッケージを屋台型の陳列台にすることで、組み立てるところから楽しめて、組み立てた後もお店屋さんごっこをして遊べるようになっています。
陳列台の組み立てには、ハサミもノリも要りません。ダンボールで手を怪我しないよう、断裁部分には加工を加えているので、小さいお子さんでも組み立てられるようになっています。
木村石鹸にもあるんです。組み立ててみた。
福井さん:陳列台を組み立てた後も楽しんでほしいよね、ということで、ダンボールの余り部分をおもちゃのお金にしてみました。自分で作った陳列台で、駄菓子屋さんごっこをして遊ぶことができます。
──まさに、お菓子を食べるだけじゃなく、お菓子で楽しめる商品ですね~!
福井さん:先ほども言ったように、1つ30円とか低単価の商品でどうやってお客さんに満足してもらおうかと思ったら、それこそ何でもかんでも入れてまえ、みたいな部分は元々あったもんね、うちの会社ってね。
そこは、私らのいちばん得意なところやと思います。「ひとつのものに楽しみを詰め込む」という商売人のモノの作り方やね。
発売当時はコロナ禍だったこともあり、お子さんが自宅で楽しい時間を過ごせるよう、みんなで知恵を出し合って作り上げました。
──コロナ禍が背景にあったんですね・・・
コロナ禍で生まれた特別な商品アイデア
福井さん:「プチプチ占いシリーズ」って知ってますか?
──はい、パッケージからお菓子を取り出すと、占いができるお菓子ですよね。
出会い・告白◎!
人気・へそくり◎!
めっちゃ食べてる(笑)
福井さん:この商品は来年で発売40年経つんですけど、コロナ禍のときに、ちょっとでも笑顔になってほしいってことで、占いの結果が全部二重丸のやつを仕込んでみたんです。
あえて弊社からは何も発信してないんですけど、見つけたお客さんが「全部二重丸だったよ」ってSNSにあげてくれたり、中には、フリマアプリで売ってるような人もいたりとかですね。
──チーリンさんのお菓子は、手に取った人が自然に楽しめるようになってるんですね。
福井さん:遊び心と言えばかっこええねんけど、もっと、いや何やろ、欲張りというか、大阪弁っぽい言葉でなんて言ったらええんやろ。とにかくまぁ、あれもこれもしたい、みたいな感じやと思います。
「やってみよう!」をカタチに
──常に、こうしたらいいんじゃないかとか考えてるんですか?
福井さん:うちね、全然そんなかっこよくなんかないんです、うるさいんです。僕なんかうるさいうるさい言われる(笑)。だってね、いろんなことをうるさく言いますから(笑)。
いろんなことが言いやすかったり、すごい環境もよくて、みんな前向きでどんどんブラッシュアップしていく、みたいになってたらかっこいいですけどね。たまたま後からこうやって語れるだけのことであって、ほんまそんな感じですよ。
て、思わへん?
小菅さん:まあ、そうですね。ちっちゃい改良の例ですけど、昔はお菓子の袋に吊り下げ用の穴はなかったけど、店舗さんで売りやすいように、今は空いてたりとかはあります。
福井さん:大きな投資が必要なら、検証が必要やったりしますけど、そんなことではなくて、本当にできることで、すぐできるんならやったらいいやん、みたいな感じですね。
うちらみたいな小さな会社は、営業マンが改善したいと思ったことや、お客さんからのご要望を次の日の議題に上げたりできますから。
──小さな会社だからこそできること、ということですかね?
福井さん:そうです、そうです。
以前、テレビで「おうちで駄菓子屋さん」を紹介してもらったことがあったんです。会社に取材が来てくれて、生中継だったんですけど、中継が終わる前から注文がどんどん入ってきて、結局何百件とか。
──嬉しい悲鳴ですね!
福井さん:はい、もともとあの商品は、注文が入ったら企画メンバーが箱詰めをしていて、テレビの反響分も企画メンバー3人でやりきりました。ほんまに家内制手工業の最たるもんですよ。
──え、そうなんですか!
福井さん:バイト募集してるんでしません?お昼ご飯ご馳走するぐらいなら何でもしますよ。
でもあれですよ、1セットに21種類、全部で42個入れますから。全部セットしたのにお菓子が余ってるときがあって、そのときはもう全部1回開け直してね。
小菅さん:そうそう(笑)。
福井さん:そのときのルールで、全員が間違ってる可能性があるからっていうので、誰が間違ったとかいうのは一切言わない。ぱっと中見たら、誰の入れ方ってのでわかるんですけどね。
みんな:爆笑
福井さん:それはもう何も言わない。「あ~、あった、あった~!」言うて。平和にせなあかんからね?(笑)そんな感じでやってます。
執筆:木村石鹸スタッフ 山下
カメラ:木村石鹸スタッフ 林