木村石鹸百年史
100年つづく石鹸会社をつくった3人のナニワ商人(03)〜サラリーマンやめて、もっぺん石鹸屋やったる〜
次の物語の主人公は、2代目金太郎さんと現社長幸夫さん。戦争で廃業してから、どのようにして再び立ち上がったのでしょうか…!
現在働いている社員の中で、実は木村石鹸の歴史を知っている人があまりいない…。このままでは、その成り立ちや100年の歴史が分からなくなってしまうかも…
ミネマツ
「では、社長にインタビューして、記事におこしましょう!」
ということで社長と社長ご婦人にインタビューした内容をまとめています。
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100年つづく石鹸会社をつくった3人のナニワ商人(01)〜はじまりは、12歳の家出少年から〜
次の物語の主人公は2代目金太郎さんと現社長幸夫さんのお話です。ちなみにキンタロウさんではなく、カネタロウさんです。
戦後、空白の10年
ミネマツ
「廃業になった昭和19年から再び事業を再開する昭和29年までちょうど10年ありますが、金太郎さんは何をされていたのでしょう?」
社長
「金太郎は元々よそさまで働いとったんや。そこも空襲で焼けてしもうて廃業してしもたんやて。」
ミネマツ
「木村石鹸だけではなくお勤め先も・・・激動の時代ですね・・・」
ミネマツ
「それでいよいよ石鹸屋に?」
社長
「いや、また違うとこで働きよったんやわ。ボイラー屋で。」
社長夫人
「金太郎さんは、最初サラリーマンやったんやね」
社長
「そしたらその会社の社長が養子をもらってきたらしいわ。社長としては、その養子に仕事覚えさせてやって貰おうと思っとったんやな。」
社長
「そんである日給料袋に『木村さんは仕事があるときだけ来てくれたらええから』と書いてあったんやて。」
ミネマツ
(まさか…金太郎まであのパターンか?)
社長
「それに頭きて、そんなら辞めますって言ったんやて。木村さん、辞めるゆうても、そんな簡単にはやめられまへんよ言われて朝から昼まで説得されたらしいけど。」
ミネマツ
(やっぱり!!!)
社長夫人
「ほんまみんな短気な血筋やなあ」
2代目金太郎さんと中学1年生の頃の幸夫現社長
社長
「わしはもう中学に入っとったから、そん時のことはよう理解できてたわ。今でも覚えとるけど辞めた言うて帰ってきて、それから2カ月間火鉢の前に座ってじっと考えとったわ。」
社長夫人
「ボイラーの1級免許も持ってたし、器用やったからその間も、うちに来てくれ来てくれって色んなところから誘われとったんやてね?」
社長
「そやねんけど、2カ月経ったある日、『よっしゃ!昔の石鹸屋やったる!』言うたんや。」
社長
「わしはそれがほんっまに嬉しくて。あんな嬉しいことなかったな〜。石鹸屋どんなもんか知らんかったし。」
お父さんの石鹸屋やるぞ!に心躍ったという幸夫社長
葬式代も出せないのに石鹸屋やるのか
社長
「一番はじめはおやじと二人で煉瓦組んでそこにドラム缶置いてな。そんつぎは攪拌する機械、それを回すモーターや。やけど手でやったほうが早い言うて手で混ぜるねん」
社長
「そんで秋からは石鹸で回るようになった」
副社長
「たしかその頃お母さんが亡くなったんとちゃうかったっけ?ちょうどまた石鹸屋やる言うてる時に亡くなったんやわ。」
社長
「金がなかったから、おやじに金借りてこい言われてな。親戚のおじさんに頼みに言ったんや。そしたら、『おまえんとこのおやじは葬式あげる金もないのに、石鹸屋なんかやるんか』言われて。」
社長
「そん時は、絶対に石鹸で儲けたるって思ったなあ。」
社長
「それからは石鹸焚く日は学校も休んどったわ」
社長
「おやじが一人で石鹸焚いてる時にな、学校に電話かかってくんねん。『幸夫、はよ帰ってこい!石鹸手伝え』言うて」
ミネマツ
「今だったらお父さん、怒られちゃいますね笑。」
社長
「先生も、『木村ー!おやっさん帰ってこいいうてるから帰れー』って」
ミネマツ
「自由ですねw」
社長
「わしは勉強あんまり好かんかったから、よっしゃ―言うて飛んで帰ったわ。石鹸つくるのも楽しいし、石鹸売りに行くのも楽しかった。」
ミネマツ
「根っからの商売人気質なんですね〜」
自分で売った最初の石鹸
ミネマツ
「売り込み営業もやってたんですか?」
社長
「封筒に石鹸の粉詰めてサンプルにしてな、クリーニング屋に配んねん。「おっちゃん、石鹸こうてや!」言うて。」
社長夫人
「実は最初のうちは、金太郎さんが裏で動いててくれたんよね」
社長
「そや。今からうちの息子行くから、よろしく頼むな!って言うてくれてたみたいやわ。」
ミネマツ
「なんだか町全体が家族みたいで、温かいですね。」
社長
「最初売れたときは、ほんまに嬉しゅうてな、大和川の土手で飛び跳ねたわ」
副社長
「1件営業とると、100円もらってたんちゃうかったっけ?」
社長
「そりゃわしもカメラとか欲しいもんがあってな。中学3年生の時同級生が新聞配達で金もらってるの知って。おやじに頼んだんや」
社長
「それで中学卒業までの1年間で5万円貯めたんやで。」
ミネマツ
「1件100円ということは…1年に500件成約になったということですね!すごい!」
副社長
「5万円いうたら今でいうとどれぐらいやろ?」
社長
「そん時のサラリーマンの給料が月1万円位やから、100万くらいちゃうか」
ミネマツ
「中学生がすごいなあ」
5万円貯めた中学校3年生の頃の幸夫社長
ボイラー会社をやめて、2カ月間火鉢の前でずっと考え込んでいたという金太郎さん。
そして、そんなお父さんを中学生ながらに立派に支えた、若かりし日の幸夫社長。
二人の手によって戦争で一度廃業した木村石鹸は、空白の10年を経てこの世にまた産声をあげたのでした。
1年で5万円(当時100万円程度?)を手にした中学生の幸夫社長。一体何に使うのでしょうか?
次回から本格的に幸夫社長のお話が始まります。