木村石鹸百年史
100年つづく石鹸会社をつくった3人のナニワ商人(01)〜はじまりは、12歳の家出少年から〜
このままでは、その成り立ちや100年の歴史が分からなくなってしまうかも…ということで社長と社長ご婦人にインタビュー。第一回目は、初代熊治郎さんと石鹸との出会いのお話です。
ミネマツ
「今日はお時間ありがとうございます。お!社長、散髪されましたか?素敵ですね!」
社長
「写真撮るっていうから、かっこつけてきたわ(ははは)!」
社長夫人
「あんまり上から撮らんであげてな」
事の発端は副社長でした。
副社長が家業である木村石鹸に入社したのは今から3年ほど前。それまでは別の会社で働いていました。そのため、実は会社の歴史について断片的に知っていることもあるが、知らないことも多いとか。
このままでは木村石鹸の成り立ちや歴史が分からなくなってしまうなんてことに…
ミネマツ
「では、社長にインタビューして、記事におこしましょう!」
と、いうことで今回の企画が実現しました。
では、さっそく幸夫社長にお話を伺ってみましょう。
石けんの前は歯ブラシ屋さん、そしてその前は髢屋だった
ミネマツ
「社長は木村何代目になるのでしょうか?」
社長
「わしで、木村3代目や!」
社長夫人
「おじいちゃんが熊治郎さん、その次が金太郎さん、そんでその次がお父さん」
ミネマツ
「初代熊治郎さんは元々歯ブラシ屋さんだったと聞いたのですが…」
社長
「そうそう。そんで熊治郎の前は髢屋。」
ミネマツ
「カミジヤ…?!」
熊次郎が生まれた明治末期の女性の髪形。西洋の要素があって、とてもかわいい。
社長夫人
「髢屋って分からへんか。まあ日本髪結うときに使うカツラみたいなもんやな。」
副社長
「え、俺はじめて聞いたんやけどw!」
社長
「熊治郎は髢屋が嫌やいうて、12歳で家飛び出したんや。そんで歯ブラシ屋に奉公に入って」
ミネマツ
「なんと、、12歳で!ものすごく肝が据わってますね…」
社長
「そこから修行してな、18の時に独立。木村歯ブラシ製造所ちゅうのをつくったんや」
ミネマツ
「なんと、、更に18歳で起業…浪速のビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグといった感じですね。」
社員70人、輸出比率90%のグローバルカンパニー
社長夫人
「結構社員も沢山いた言うてたな。70人くらいでお手伝いさんもいて」
社長
「取引先もアメリカとか海外が90%!おじいちゃんもおやじも英語話せたんやから」
ミネマツ
「え、ものすごいグローバルカンパニーじゃないですか笑」
副社長
「70人ってw今の倍位社員いるやん(笑)そんなデカかったんかい。」
社長
「今みたいに機械やなくて、職人が手で牛の骨を削ってつくるんやから、それくらい職人が必要やったんとちゃうか。」
「今日から石鹸屋やる!」といって歯ブラシ屋をやめた
※イメージ「大正時代の別府/竹瓦温泉」( 出展 )
社長
「それがある日突然、「歯ブラシ屋しまって、石鹸屋やるんや!」となって。」
ミネマツ
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください笑。なんで、唐突すぎませんか笑」
社長
「そりゃ、銭湯でな、隣で体洗ってた近所のおやじに言われたんや。「木村さん、石鹸って何で出来てるか知ってはりますか?」
社長
「そんで、「石鹸いうんやから、石か何かだろうが」と返したら「木村さん、石鹸は油でできてますねん」と言われたらしんや」
社長
「熊治郎は、油いうたら汚れるもんで汚れ落とすもんちゃうやろ。そんな油から石鹸なんかできるわけないやろって信じられへんかったらしいわ」
社長
「そしたらそのおっちゃんが、知り合いの石鹸会社があるから見せてやりまひょ、となったらしいわ」
社長夫人
「実際に油やらなんやら入れて、釜でぶくぶくいって、ぶわ〜と広がって石鹸になるのを見て、ものすんごく感動したんやって」
ミネマツ
「それで、歯ブラシやめると笑。12歳で家飛び出したりと男気ありますね、本当に。」
副社長
「でも、そんなにすぐ石けん屋になった訳じゃないでしょ?」
社長夫人
「いや、すぐ歯ブラシ屋やめた」
副社長
「え(笑)」
このインタビューを受けて改めて調べてみたのですが、
歯ブラシが楊枝のようなスタイルから現在のブラシスタイルになったのは明治維新以降。
ブラシ製造は明治38年頃、大阪市内や八尾市内の工場で始まり、大阪は、昭和45年頃まで我が国唯一の産地だったそうです。
12歳で家を出た熊治郎さん。
熊治郎さんは明治20年前後生まれなはずなので、ちょうど大阪で歯ブラシの製造が始まった時期とかぶります。おそらく奉公していたのもこういった新しい工場だったはずです。
ミネマツ
「当時新しい技術であった「歯ブラシ屋」を選んだことからも、新しい技術や目新しいものが大好物だったのかもしれません。」
12歳の熊治郎さんの家出からすべてははじまった
さてさて歯ブラシ屋をやめて、石鹸屋になると決めた熊治郎さんの物語はつづきます。