インタビュー
自分に向き合い、自分を好きになれるように。“わざわざ流”シャンプーの考え方、ブランドの愛し方──平田はる香さん×『12/JU-NI』
選びぬかれた日用品とこだわりのパンのお店「わざわざ」、本とギャラリーのカフェ「問(とう)」などを経営する平田はる香さんがみつけた、自分の髪の愛し方についてお聞きしました。
「ライフスタイルも体質も変わっていく。それに合わせたケアのやり方を、自分で考えていくことが大事なんだと思います」
シャンプーやコンディショナー、ヘアミルクなど、木村石鹸の『12/JU-NI』を愛用いただいていた、平田はる香さん。長野を拠点に、食と生活それぞれの面から「自分たちが心からよいと思うもの」を販売する、パンと日用品の店「わざわざ」の運営者でもあります。
自分のくせ毛に長く悩んできたなかで、出会った『12/JU-NI』をどのようにお使いいただいているのか。インタビューをしていくと、ご自身のからだ、そして生活を愛そうと試行錯誤する、平田さんらしい一面が出てきました。
くせ毛との付き合い方に、ずっと悩んでいて
私もともと、強烈な天パ(天然パーマ)なんです。ものすごくカールするくせ毛に、小さい頃からずっと悩んでいて。小学校の時はヘアセットのやり方も何も知らないから、毎日ボサボサの寝癖で登校してましたね。
中学生になって美容院に行くようになっても、憧れてるストレートヘアの人の写真を持っていっちゃうから、「そんなのできません」って言われるんですよ。だから、ずっと帽子被ったりして、髪を隠してました。
——ご自身の髪が、あまり好きではなかった?
すごく嫌でした。でも、それをずっと「仕方がない」と思ってたんです。自分のくせ毛はストレートより劣ってる髪質で、ここから脱することはもうできないんだ……って。
20代になってくると、くせ毛を生かす方法を探ってくれる美容師さんにも出会えるようになりました。けれど、それも大量のセット剤で強引に“もっていく”みたいな感じで、やっぱりしっくりこなくて。そこから「何とか自分でできないかな」と思って、いろんな洗髪を試すようになったんです。
——どんなことを試されたんですか?
たとえば、あるWebの記事で見た「石鹸でシャンプーしたあとに、クエン酸でリンスをする」って方法。くせ毛の人の、乱れたキューティクルを落ち着かせられるって書いてあって、実際やってみたら、確かにちょっと髪が落ち着くようになるんです。
ただそのぶんパサつきも出てきて、髪がキシキシするというか、快適感がなくなるんですね。しかも石鹸+クエン酸って、匂いが何もしないんですよ。まったく香りがなくて、それもつまらないというか……。
他に、いろんなメーカーの石鹸シャンプーも試したんです。でも、キシキシするっていうのはやっぱり変わらなくて、「何か嫌だなぁ」とずっと思ってましたね。
驚くほど髪がまとまった『12/JU-NI』
——『12/JU-NI』を知ったきっかけを教えてください。
「わざわざ」のお店に木村さん(木村祥一郎:木村石鹸 4代目代表)が来てくれたとき、サンプルをもらったんです。2020年くらいかな? もともと洗剤は木村石鹸の『SOMALI』を使ってたし、ずっと髪は困ってたから、「え、シャンプー? おもしろそう!」って思いました。
——使ってみて、どう思われました?
香りとか髪になじむ感じは、「あ、気持ちいいな」って思いました。でも正直、髪をうまくまとめる点では、最初イマイチかも……って感じたんですよ。それを木村さんに伝えたら、「平田さん、それは乾かし方が足りないです」って言われて。
——『12/JU-NI』は、補修成分を髪に固定するために、ドライヤーの熱をしっかり当てないといけないんです。
ですよね。私、あんなに説明書にちゃんと書いてもらってるのに、読んでなくて(笑)。なので、自分でちゃんと製品を買い直して、ドライヤーのかけ方を変えました。しっかり乾かすようにしたら、すごくまとまる感じがあって。
特に朝の寝癖が、どんどん収まっていったんですよ! 毎朝、頭が爆発してる状態だったんですけど、さっと直すだけですぐ整う状態になって、感動しました。
(使い初めのころ、平田さんは毎日SNSに髪の変化をアップしてくださってました)
より髪の特性に合った使い方にアレンジ
——そこからずっと『12/JU-NI』(Type-A:しっとりタイプ)を使い続けてくださってますよね。
それが……実はまた、ちょっと髪との付き合い方を変え始めてるんです。というのも、今年の6月ぐらいからかな?『12/JU-NI』を使っても、うまくセットできなくなってきたんです。
——2年以上経って急に?
そう。梅雨に雨がたくさん降った影響なのか、私の年齢の変化なのかわからないですけど、何だかパサつくようになってきて。(※開発者注)
ヘアクリームやオイルを使ってみたり、いつもより短く切ってもらったり工夫しても、あんまりうまくいかない。で、また調べるうちに、最近「カーリーガールメソッド」っていうのを知ったんですよ。
——聞いたことがあります。くせ毛をきれいに引き出すヘアケアの方法ですよね。
アメリカでちょっと前に生まれて、日本でも注目されてきているみたいです。そこで勧められているのが、できるだけ頭皮の油分をそがないよう「優しく洗う」ことと、洗ったあとも「優しく乾かす」こと。クリームやオイルを揉み込みながら、ドライヤーを微風にして、ゆっくり乾かすのがいいらしいんですね。
そして乾いたら、一度ジェルで髪を固めて、それをまたほぐす。実際やってみると、すっごいきれいな縦カールが出てびっくりしました。しかもそのヘアスタイルが、1日しっかり保たれるんです。
——平田さんの髪にすごく合ってたんですね。
カーリーガールメソッドは、もともと表面が傷ついているくせ毛を、洗いすぎるのがまず良くないって考えなんです。それを知ってからは、『12/JU-NI』と出会う前にやってた湯シャン(シャンプーを使わずに、お湯だけで髪や頭皮の汚れを洗い落とす方法)の日も、時々混ぜていくようにしています。
他にも美容師さんの「保湿にいいよ」ってアドバイスで、湯シャンと『12/JU-NI』のコンディショナーを組み合わせる日もつくったり、あれこれ試行錯誤してますね。あとはお風呂上りに、この春に出た「ダメージリペアヘアミルク」を揉み込んで乾かすと、いい感じのウェーブが出てくれるんです。
(※ 開発者注:ご指摘のあった『12/JU-NI』の使用感の変化については、人によっては「髪の汚れが落ちきっていない」「お引越しによる水質の変化(硬水)」「メイクに含まれる酸化チタンが付着している」ことなどが原因のケースもあります。そもそも『12/JU-NI』シャンプーが、肌にやさしいマイルドな洗浄成分で構成されているため、「スカルプケアクレンジング」を事前に使うことで、シャンプー・コンディショナーの洗い上がりがよくなることがあります。今回、平田さんにもインタビュー後に当該品をお勧めしたところ、「髪の仕上がりが良くなりました!」とおっしゃっていただいたので、お心あたりの方はぜひ一度お試しください)
自分の「生活」にあわせて考え続ける
——『12/JU-NI』はストレートを目指す方にご好評いただくことが多いですが、一方で「ストレートだけが『12/JU-NI』の価値じゃない」という思いもあるんです。カーリーヘアの方で、せっかくのパーマやカールを伸ばしながら乾かされている方も結構いらっしゃって。
ああ、まさにそれでした! 引っ張るようにブローしちゃうんですよね。どうしてもくせ毛の人って、「まっすぐになりたい」って思いがあるから。でも、それが余計に髪を痛めちゃってた。
そういう無理な乾燥のさせ方を何年も続けたことに、たぶん年齢による変化が重なって、急にまとまらなくなったのかなと思います。状態が違うのに「同じように」しようとしたのが、たぶん間違いだったなと。
——たしかに、体質もずっと「同じ」ではないですもんね。
たとえば大人になると、脂ものって食べられなくなるじゃないですか。唐揚げとかハンバーグとかも、胃腸とかの負担とか考えて、だんだん食べなくなっていく。体の中の脂質の量も変わりますよね。だったら、20代と50代で同じ洗髪をしなきゃいけない、って常識はないはずです。
私の場合は、完全に洗いすぎてたんでしょうね。実は今、さっき言った洗髪に加えて、髪を全く洗わない日もつくってるんです。1日ずっとリモートワークとかだと、それでも全く不快じゃないし、髪の調子はめちゃくちゃ良くなりました。
——『12/JU-NI』も決して万能なシャンプーではないんです。そのことはわかっていたつもりですが、平田さんのお話を聞いて、「一人の人の中でも、商品の受け止められ方って変化していくんだな」と改めて気づかされました。
それでも私、木村石鹸さんのアイテムそのものは、ずっと好きなんですよ。何て言うか、すごく「塩梅がいい」から。香りにしても、本当にちょうど良くて。
洗浄剤にしろシャンプーにしろ、他でつくられているものって「すごく強烈な匂いがする」か、逆に「ナチュラルを謳ってほとんど香りがしない」か、どちらかが多いんです。でも、木村石鹸のブランドのものは、使った瞬間に、その人の周りだけをふわっと覆ってくれる感じの、すごくオレンジのいい香りがするんですね。かといって後にも残りすぎない、絶妙なポイントをついてる。
それが心地良くて、あとは会社自体もすごく好きで応援したいから。仮にこの先どんどん自分の髪が変わっていって『12/JU-NI』を使わなくなったとしても、「じゃあそのぶん、木村石鹸さんの洗剤を使おうか」みたいな気持ちになると思います。
——会社を応援したい、と言っていただけるのはとてもうれしいです。
自分の中の基本として、製品の合う・合わないとは別に「会社のあり方や思想が好きだから買う」という考え方があるので。単純な好みや利便性だけで商品を選んでたら、やっぱり社会は悪くなるじゃないですか。
その会社はどんな思想か、そのブランドに何を期待して買うか、消費者が選んで行動することで、世の中は絶対変わると思うんですね。私はそれを実践したくて。だから、これからも使い続けますし、「わざわざ」でもお客さんに提案していきたいと思っているんです。
自分に向き合い、好きになっていける生活用品を
——使っていただく方が、少しでも自分の暮らしを楽しくしたり、大切に思ったりできるような生活用品を届ける。この部分は、たしかに「わざわざ」さんの思いと通じるものがある気がしています。
うちでもリピーターさんもしっかりついてますしね。ただ木村石鹸さんって、シャンプーにしても洗剤にしても、うちで扱ってるものの中で一番高いんです。だから、値段がハードルになっている面は正直あると思う。
それでも、家事だったり体を洗うことだったり、普段何気なくやっていることを適当に流してしまいたくない人、ちゃんと「自分の生活」に向き合っていきたい人には、めちゃくちゃ痒いところに手の届くメーカーだと思いますよ。
——『12/JU-NI』も平田さんがまさに、自分に向き合う過程で、ご自身が髪を好きになっていけるよう日々使ってくださっていたんだなと感じました。
ライフスタイルや体質、年齢などに合わせて、その都度どういうケアをするべきか、自分で考えていくことが一番大切なんだと思います。シャンプーひとつとっても、毎日洗うことが正解な人もいるし、週2回でいい人もいるかもしれませんから。
あとは、自分が今持っているものを、天からの「ギフト」と捉えていくこともすごく大事じゃないかなと。実は私、以前に縮毛矯正をしようとしたことがあって、髪をずっと切ってくれてた美容師さんにめちゃくちゃ怒られたんですよ(笑)。「平田さん、何言ってるんですか。あなたのカールは、神様がくれたギフトなんです」って。
——「ギフト」って、すごくいい言葉ですね……!
その言葉ひとつで、実際に気持ちがガラッと変わりました。これって、もともと持っていた“その人らしさ”みたいなものだと思うんです。
だから、その“らしさ”を、いかにチャームポイントとして引き出すことができるかが大事で。それを助けてくれる、木村石鹸さんみたいな生活用品を私は使いたいし、みんながそれに気づくような提案を「わざわざ」もしていけたらいいのかなって思いますね。
平田はる香(ひらた・はるか) パンと日用品の店「わざわざ」代表取締役。2009年、長野県東御市の山の上に、趣味であった日用品の収集とパンの製造を掛け合わせた店「わざわざ」を一人で開業。2017年に株式会社わざわざを設立した。2019年、東御市内に2店舗目となる喫茶/ギャラリー/本屋「問tou」を出店。2020年度で従業員20数名で年商3億3千万円を達成。2023年度に3、4店舗目となるコンビニ型店舗「わざマート」、体験型施設「よき生活研究所」を同市内に出店した。著書に『山のパン屋に人が集まるわけ』(サイボウズ式ブックス)。 |
執筆:佐々木将史/写真撮影:若菜紘之