HASHUKA
HASHUKA植物コラム4:月桃の仲間たち
HASHUKAの植物コラムです!
書き手:うらちゃん
こんにちは。木村石鹸スタッフのうらちゃんです!
HASHUKA植物コラム第4回。
今回は少し専門的な内容です。
月桃が属するショウガ科ハナミョウガ属の「仲間たち」を、本草学(植物の薬用利用の学問)の視点から紹介していただきます。
タイ料理でおなじみのガランガル、漢方薬の胃腸薬、口中清涼剤の仁丹……意外なところで私たちの生活にも登場しています。
多胡さんのマニアックな植物愛が炸裂する回です。どうぞお楽しみください。
今回は月桃の仲間についての本草学的なお話をしたいと思います。
月桃はショウガ科ハナミョウガ属に属する植物です。
ショウガ科にはおなじみのショウガも含め、食用や薬用に使われる有用植物がかなり多いグループです。ハナミョウガ属のほか、ショウガやミョウガが属するショウガ属、お酒好きの方やカレー好きの人ならなじみ深いウコンの属するウコン属もショウガ科です。
この中でハナミョウガ属(Alpinia)は私好みの植物が属するグループだったりします。それではハナミョウガ属の植物について、いくつかご紹介したいと思います。
【ナンキョウ Alpinia galanga】
ナンキョウは根茎がタイ料理の香りづけ等に使われるガランガル、いわゆるタイショウガの一つです。タイではカーとも呼ばれます。タイ料理屋さんでトムヤンクンを食べるとき、底に沈んでるすごく繊維質なショウガみたいなスライスはナンキョウの可能性が高いです。
外見はショウガそっくりの根茎なんですが、よりハーバルな香りと言いますか、香草と柑橘の混じったような雰囲気もあるエスニックな感じの香りがします。ナンキョウの根茎とコブミカンの葉っぱを入れるとタイ料理が一気に本格的な香りになります。
本州ではなかなか生の状態を見つけるのは難しいのですが、この前沖縄のファーマーズマーケットで売ってるのを見つけて大興奮しました!
そしてナンキョウの実を乾燥させたものは「紅豆蔲(こうずく)」と呼ばれ、生薬として利用されます。フラボノール類を含み特有の香りがあり、芳香性健胃薬として利用されます。生薬としては中医学で使われる印象です。
また、メラニン産生を抑制するという研究もされており、化粧品への応用も期待されます。
【リョウキョウ Alpinia officinarum】
リョウキョウは中国南部や東南アジアでは根茎が魚料理の香りづけ等、食用にで利用されることもあるようですが、どちらかというと個人的には薬用のイメージが大きい植物です。学名の小種名のofficinarumも薬用にされる植物につけられる名前ですね。
そしてなかなかにナンキョウとの関係がややこしい植物です。こちらもナンキョウ同様にガランガルとして根茎が利用される植物の一つです。どうもガランガルと呼ばれるハーブは4種類ほどの植物が使われるようで、その中でナンキョウとこちらのリョウキョウがハナミョウガ属のガランガルなんです。
そしてリョウキョウの根茎を乾燥させてものは漢方の生薬、「良姜(あるいは高良姜)」として使用されますが、ナンキョウの根茎も「大良姜(あるいは大高良姜)」として流通することもあるようです。すごくややこしいです。リョウキョウは精油成分などを含み、香りが良く辛みがある感じです。こちらも芳香性健胃薬として利用されます。
良姜を含んだ漢方薬としては胃痛などに使われる安中散が有名です。医療用漢方製剤に配合されることから、他のハナミョウガ属の植物に比べて日本では結構よく使われる薬用植物といった印象があります。
【ヤクチ Alpinia oxyphylla】
ヤクチはトーチ状の花が綺麗な植物で、丸いグリーンの実もちょっとかわいい植物です。
ヤクチも他のハナミョウガ属の植物同様に薬用に利用され、乾燥した成熟果実は「益智」として芳香性健胃薬などに利用されます。ただ、日本では少し印象が薄いように思われます。リョウキョウほど特定の漢方処方に使用されているわけではないのと、ナンキョウのような料理用の利用があまりないからでしょうか?どちらかというとOTC薬などに利用される印象があります。
そのちょっとマイナーなヤクチ、実は有名どころでは口中清涼剤の仁丹に配合されていたりします。あの生薬特有の香りの銀色の粒々(ケーキに乗ってるやつじゃないほう)ですね。習字を教えてくれてた私の叔父が仁丹ケースに入れて常用していました。こんな感じでハナミョウガ属の植物は香りが強いので、口の中をスッキリさせたり、胃の働きを促すようなものに配合されることが多かったりします。
【ソウズク Alpinia katsumadai】
ソウズクはお花がかなり月桃に似た植物です。月桃が下向きに枝垂れて花をつけるのに対し、ソウズクは上向きに花の穂が伸びる違いはありますが、発達した白い苞から花を伸ばすあたりとても月桃に似た系統のフォルムです。リョウキョウやナンキョウのお花が苞があまり目立たず同じくハナミョウガ属のアオノクマタケランに似た印象なのとはちょっと対照的ですね。
ソウズクも成熟した種子団塊を乾燥したものを生薬の「草豆蔲」とし、こちらもやはり芳香性生薬として消化不良や胃腸の痛みなどに利用されます。あと面白いのは皮膚のメラニン生成を抑制するという研究もされており、実際に化粧品原料会社さんで美白、UVケアコンセプトの原料として販売されていたりします。
ちなみにこれらのハナミョウガ属の植物の実は、鞘の中で種が団塊状に集まっており、香りが強いという特徴があります。これはスパイスとして有名なカルダモンとかなり似た特徴ではあります。実はカルダモンもショウガ科までは同じなんです。ただ、カルダモン(特に一般的なグリーンカルダモンのElettaria cardamomum)はショウズク属でちょっと違うグループの植物ではあるんです。しかし、この手のショウガ科のグループ(ハナミョウガ属、ショウズク属、アモムム属など)の植物は、成分も重なるところがあり、生薬的には、厳密に言うと薬味や薬能は異なるものの基本的に同じような芳香系の胃薬によく使われる傾向のある植物群だったりします。
実際、月桃にも赤い実がなるのですが、中の種の香りはカルダモンに通じるものがあり、カルダモンのようにスパイスティー的に利用できたりします。
個人的な方針ではあるのですが、こういった類縁植物での成分や効果、利用方法の相同性、文化的背景とかは、化粧品開発において植物エキスを選択するうえでの参考情報として生かしていたりします。
編集後記
みなさま、最後まで読みましたでしょうか?きっと、飛ばし飛ばしで編集後記まで来てしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回のコラムは、多胡さんはとっても植物が好きなんだな・・・というくらいの認識で軽く読んでいただければと思います。
植物図鑑を片手に、森を散策する多胡さん(写真の葉は月桃の仲間らしいです)
多胡さんはもともと、ヘアケア関係の原料会社に勤められていました。
その経験は、今のHASHUKAの開発スタイルに直接つながっています。
「原料会社任せだとデータも原料会社のものしか見えない。自分たちで調べて、原料から作りたい」と話していたことが、このコラムの視点の深さにも表れている気がします。
類縁植物の成分や文化的背景を原料選びの根拠にする…そういう発想が自然に出てくる方です。
沖縄のファーマーズマーケットでナンキョウを見つけて「大興奮した」という一文、このコラムで一番好きなところかもしれません。
次回はいよいよ最終回。多胡さんの意外な趣味と、コラム全体の締めくくりをお届けします。
