くらしの豆知識
第4回 いい洗濯、わるい洗濯~これですっきり!洗濯の疑問
ALL YOURS×木村石鹸のコラボ企画「衣類と洗濯の理想の関係」の第4回。今回は「いい洗濯、わるい洗濯」について考えてみました。なんかちょっと哲学的な話?になってます。
ALL YOURS×木村石鹸のコラボ企画「衣類と洗濯の理想の関係」の第4回。今回は「いい洗濯、わるい洗濯」について考えてみました。なんかちょっと哲学的な話?になってます。
前回はこちら。
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洗濯をやらされていませんか?
注)祥一郎(木村石鹸代表木村祥一郎)/まさし(オールユアーズ代表木村昌史)です。
まさし:
これまでいろいろ聞いてお話してきたのですが、「いい洗濯、わるい洗濯」について考えて行きたいと思っています。祥一郎さんの中で何か定義のようなものってありますか?
祥一郎:
昔木村(まさし)さんのPodcastを聞いている時に「自己決定感」という言葉を使われていたんです。その印象が僕にはすごい残っていて、洗濯にもそれが大事なんじゃないかなと思ったんですね。
まさし:
あのPodcastでは人間の幸福度は自己決定感に左右されるのではないか?という話をしたと思います。
祥一郎:
そうですそうです!
まさし:
自己決定をするには選択肢が必要で、自分で決めることの数が多かったり、範囲が広かったり、規模が大きかったりするとより良いんじゃないかなという話もしました。
以前ウェルビーイングについて研究している早稲田大学准教授のドミニクチェンさんと対談をした時に伺ったことなのですすが、心理学の研究では、人間は自らが判断できる余白、すなわち「自律性」を担保することは、人がウェルビーイングな状態になる上で、とても重要なことなんだと教えてもらったことがありました。
この話を聞いて、「洗濯」という日頃いつもやっている事を少し考えるだけで、自律性を養ったり、自己決定していくことを日常で実践していく事ができるんじゃないか?って思ったんです。
祥一郎:
そういった意味では、現状の洗濯は、その自己決定感がほとんど感じられないと思うんです。
生活の中で、やらざるを得ないから仕方なくやっている方がほとんどなんじゃないかな。
でも、洗濯や洗剤についてある程度の知識を持つだけで、洗濯に対して納得感が出てきて、自己決定感が出てくると思うんです。
まさし:
たしかに洗濯ってなんとなくしている気がしています。洗濯物を洗濯機に入れて、洗剤を入れて、外に干すってことをなんとなくやっているみたいな.......
祥一郎:
そもそもメーカーもいい洗濯だったり、自己決定感を持ってもらうという方向性で考えていないと思うんです。
洗濯機は時短や節水、洗剤は計量が簡単だったり匂いが長く続くなど、消費者の洗濯に対する煩わしさをなるべく解消していく方向性で進化しています。
まさし:
そう言われれば、CMやパッケージも祥一郎さんがおっしゃっていることが謳われている印象です。
祥一郎:
特に日本の場合は洗濯機それぞれについている「お任せコース」に依存している傾向もあると思うなあ。
まさし:
おまかせコースを選んでおけば洗濯自体はできますもんね。
祥一郎:
私が考える"いい洗濯"って、どのような洗濯をしようとしても、自分の考えている範囲内でコントロールできている状態なんです。
具体的なケースで考えると、酷い油汚れを落としたい時にその汚れを自分の思った通りに落とせたり、セーターやニットなどの縮みやすい衣類を縮まないように洗濯できたりなどです。
これって自己決定感を持っている状態だと思うんです。
ただ、自分で全部コントロールする必要はなくて、知識を持った状態で洗濯機を使用したり、洗剤を選ぶことが大事なんじゃないかなあと思っています。
知識を持っていないまま、なんとなく洗濯をして失敗してしまうから、余計わからなくなって、洗濯は家事の中でもめんどくさい事になってしまっている気がします。
こういう「わからないから、なんとなくやって失敗してしまう」状態はさっきの「いい、わるい」で言えば「わるい洗濯」と言えるのではないでしょうか?
まさし:
それはあるなあ。
洗濯という衣類を洗う行為は洗濯機がやってくれるし、洗剤はラベルに書かれている機能を信じて選んでいると思うので、自己決定感を持ちにくい作業ではありますもんね。
祥一郎:
人それぞれのいい洗濯について考えてみると、こだわりたい人はこだわればいいと思うし、楽をしたい人は楽をすればいいと思うんです。
いずれにせよ「どういう洗濯がしたいか?」を決めて、それに必要な基本的要素を学んで実践していけば、少なくとも洗濯を「自分のもの」にできているので、仮にその状態で失敗したとしても、次に活かして学ぶことができます。こういう洗濯の仕方が「いい洗濯」だと思いますよ。
まさし:
失敗が学びになる状態っていいですね!
日常で「なんとなく」やっていることに、少しだけ意識をしてみる。それがもしかすると日常生活が楽しくなったり、「ウェルビーイング」な状態に近づいていく、身近な実践なのかもしれませんね!
まとめ
・自己決定感を持つことで幸福度が上がるかも。 ・自己決定感といい洗濯は密接に繋がっているのではないか。 ・いい洗濯の定義は人それぞれだが、いい洗濯という感情を得るためには自己決定かんが必要 ・自分が理想とする洗濯の状態=いい洗濯について考えて洗濯をしよう |
洗濯の基本
まさし:
いい洗濯をしようと思うと、洗濯の基本を押さえておく必要性がありそうだなと思いました。
祥一郎:
木村さんは洋服を洗う時どんなことに気をつけていますか?
まさし:
洋服の生地には「高密度な生地」「低密度な生地」ってあるんですよ。例えば、今日祥一郎さんが着ているYシャツは高密度なんです。
高密度のものはそのまま洗っちゃいます。
ニットとかセーターみたいなのは密度が低く、ひっかかる部分が多いので洗濯ネットに入れて洗います。
これって生地をみたら服飾の知識がなくても、大体わかるんです。
生地を手で伸ばしてみて、柔らかくて伸びて「向こうが見えるなあ」みたいな特徴がある物が低密度です。逆に引っ張っても伸びにくかったり、元に戻る力が強かったりするものは高密度に作られている。
あとは単純に金属のジッパーやボタンは、他の衣類を痛めつける可能性が高いんですよね。なので、他の衣類とジップがなるべく接触しないために、ジッパーやボタンを全部閉めて裏返して洗っています。
祥一郎:
それいいですね。高密度、低密度という概念を知らなかったです。
僕がこうして衣類について知らないように、「洗濯」っていろいろなメーカーが部分的に拘っているんですよね。
まさし:
ザッと洗濯に関わるものを考えるだけでも、洗濯機、洗剤、洋服と領域が全部バラバラですね。
祥一郎:
アパレルメーカーでも恐らく洗剤や洗濯について調べているメーカーはあまりないでしょうし、洗剤メーカーは洗濯機について完璧に理解しているわけではないし、洗濯機メーカーも全部の洗剤でテストをしているわけではないと思います。洗濯に対して部分部分で関与しているので、抽象的になりやすいと思うんですよね。
まさし:
私もこうして祥一郎さんと話してみると、洗濯や洗剤について知らないことがたくさんあります......
祥一郎:
さらに消費者目線で考えると、「汚れの成分」の知識など、化学分野を全て把握するって難しいじゃないですか。だからなんとなく洗濯をしているケースが多いと思うんです。
なので、こうして木村(まさし)さんとお話をしたうえで、消費者に情報を届けていきたいんですよね。
まさし:
そうですよね〜
洗濯の基本の話に戻るんですが、僕は洗濯機に洗濯物を満タンに入れないようにしています。
祥一郎:
洗濯機に洗濯物を入れすぎないのは大切です。縦型の場合、せめて洗濯機の最大容量の60%以下にしないと水の中で衣類が泳ぎません。ドラム式の場合は、前回お話したように入れすぎるのも良くないですが、少なすぎると今度は衣類を傷めやすくなるので、ここも適量にすることが重要です。
まさし:
昔洗濯機に容量パンパンに入れて洗濯をして洗濯したものを取り出した時に、「あれ?全然濡れてない!」って部分があったんです。
その経験があって少ない容量で洗うようになったんですよ。自宅の洗濯機は53Lまで洗えるんですけど、20Lのランドリーボックスを脱衣所に用意しておいて、それが満タンになったら洗濯をするようにしています。
祥一郎:
洗濯後に衣類が濡れていない場合は汚れが落ちていないと考えた方がいいです。
まず洗濯で汚れを落とすには、「衣類を濡らして水に汚れを移す」ことが基本なんです。なので水に濡れる状態を作ることが必須です。でも水を張っても、衣類が濡れていないケースってあるんですよね。洗濯ネットの目がすごく細かったり、洗濯物入れすぎていたり。
まさし:
あと縦型洗濯機だと衣類が水に浮くこともありますもんね。
祥一郎:
そうですね。
洗剤には衣類を浮かせないような働きもあって、水の表面張力を下げることで洗濯物に水が浸透しやすくしてくれるんです。
まさし:
洗剤が入っていると衣類に水が染み込んで重くなりやすいから、水に沈んで泳ぐ状態になるのかあ。
祥一郎:
なので、アルカリウォッシュといって過炭酸ナトリウムなどの洗剤ではない剤で洗う時には気をつけないといけません。水が衣類にしっかり浸されている状態にすることが大事です。
まさし:
衣類に水を浸透させて水に汚れを移すっていうのが汚れの落ち方で、水に汚れをうつしやすくするために洗剤を入れているんですもんね。
酷い汚れにはどうやって対処していますか?
祥一郎:
汚れの種類にもよるんですけど、ケチャップやソースなどの油汚れは台所用の洗剤を使って部分洗いをすると落ちやすいです。台所洗剤は食器や調理道具に付いた食べ物の油を取るためにできていて衣類にも転用できるんです。またお湯を使うのもいいですね。
皮脂や血液などタンパク質系の汚れは中性洗剤と水で洗えば落ちます。血液汚れで気をつけて欲しいのは、お湯を使うとタンパク質が硬化して落ちにくくなってしまいます。血液汚れは中性洗剤と水で落としましょう。
まさし:
そうなんですね!
祥一郎:
食品関係でもカレーやワインなど色素が入っているものは、衣類を染色しちゃうから取りにくいんです。カレーだったら紫外線に弱かったり、ワインだったら炭酸水で色素を浮かせるとか対処法はあるんですけどね。なので闇雲に洗濯をする前に、付いてしまった汚れの種類に有効な対処法をネットなどにも載っているので調べてみるといいと思います。
まさし:
汚れの落とし方も原理原則を抑えると汚してしまった時の後悔が半減しそうですね(笑)。
疑問や課題を持って調べていくと自分なりの洗濯の基本も確立していきそうだなあ。
また時間を作って、洗濯の基本をまとめましょう!
まとめ
・高密度の衣類はそのまま洗っても大丈夫な物が多い。低密度のものはネットに入れる。 ・洗濯機に洗濯物を入れすぎない。 ・油汚れは台所用洗剤で部分洗い!汚れの特性によって洗剤や洗い方を変えよう! |
(次回に続く)