木村石鹸

MG(マネジメントゲーム)を社員研修として取り入れてみた

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去年からMGに取り組んでます。MGとは「マネジメントゲーム」の略で、簡単に言うと、自身が社長になり会社を経営するゲームのことです。

詳しくはこちらをご覧ください。

マネジメントゲーム 戦略MG MQ会計 西研究所

 

1回の研修が2日。2日で5期の会社経営をする、というのがMG研修のオーソドックスなパターンのようです。僕個人はとにかく30期はやってみようと決めました。会社としては、ひとまず部長陣には15期以上やることを義務にしました。

今、全部門長は1回参加して、5期までやったわけですが、ほとんどの部長は、もうやりたくない、という感じかなと思います。2日間に研修で相当疲れたと思います。

でも、5期だけでは、正直、ただ疲れただけで、ほとんど意味はないかなと思ってます。僕自身もまだ14期しかやってないですが、それでも、3回MGをやってみて、やるたびに色々な気付きがあります。

マネジメントゲーム

 

MG研修は、よくある座学の研修プログラムのように、何か知らないことを学ぶとか、わかりやすく為になる、みたいな研修ではありません。やるのはあくまでもゲーム。ゲームを通じて、そこから何を得るかは、人それぞれです。

でも、ゲームではあるけれども、これは実際の経営にかなり近い感覚を味わえる不思議なゲームでもあります。お金がない時の辛さ、突発的に発生する不運、競合との駆け引き、どんな順番で何に投資するべきかの意思決定…

実際の経営にもこんなシーンは何度もあります。

 

ここから先は、僕自身の14期までのMG経験から得られてる気づきみたいなものを、書いていこうと思います。まだ14期レベルで、「気づき」とは何ごとか、とも怒られそうですが、後々振返った時に、あの時はあんなことを考えたんだなぁと思い返せることも、また勉強になるだろうし、重要なことだと思うので、あえて恥を承知で書き残しておきたいと思います。(MGやったことない人にはさっぱり意味不明の文章になってると思います)

 

■意思決定の回数を増やすこと/人の入れ替わりが激しい会社は辛い

MGでは「意思決定」の回数がすごく重要です。順番が回ってくる回数は、その卓の他の方の実力などによっても変わるので、なかなか自分だけでどうにかできるというわけでもないですが、自分の番が回ってこなくても、出来ることはいくつかあるので、それをどう有効に生かすかもポイントになります。

マネジメントゲーム

たとえば、「配置転換」は、意思決定カードを引かなくてもできます。セールスマン1人採用は20円。配置転換は1回5円、工場⇒営業、営業⇒工場を往復させると10円かかるので、配置転換を2回以上すると、1人採用したほうが得だということはなります。

しかし、人を採用する、というのも1回の意思決定です。配置転換は意思決定とは別に行えるのが最大のメリットです。配置転換をうまく使えると、都度、意思決定回数を無駄に消費せずに、販売力を上げることができます。

 

今回、僕はこの手法を有効に使おうとやってみたのですが、配置転換した直後にことごとく、「セールスマンの退職」(という「リスクカード」)を引くという運のなさというか、巡り合わせ。なんと3期のゲームで「セールスマンの退職」「ワーカーの退職」をあわせて4回も引いてしまい、この戦略は、まさに絵に描いた餅におわりました。

ちなみに、「セールスマンの退職」というのは、かなり痛いカードです。「採用」も含めると、2回分の意思決定を使います。4回退職を引くということは、8回の意思決定を「退職/採用」だけに奪われた、ということです。 当然、この8回の意思決定では製品の製造もできなければ、販売もできないし、チップの購入やらも出来ないわけです。

 

あー、運がないなぁと、ゲーム最中は、そのことを悔やんでましたが、現実の経営であてはめて考えると、セールスマンの離職率が高い職場というのは、かなり大変だと思うのです。売るもの次第のところもあるでしょうが、退職/採用みたいなのを繰り返せば、引継ぎや共有なども含めて、かなり労力が社内にかかることは言うまでもありません。

ゲームの中の出来事とはゆえ、セールスマンがいなくてモノが売れない、ということを経験すると、セールスマンの有難味も多少は分かってくるのではないかと思います。

 

■経営計画を立てることの重要性を学べる

MGは、1回のゲームで5期までしかやらないとは故、5期目にどのようになっていたいかという中長期の青写真を描き、それを考えて経営を実行していくのと、何も考えず、その都度、都度でただ判断していく、ということを続けていくのでは、やはり4期目、5期目には大きな差が生まれます。いかにして4-5期ぐらいで大きな勝負をかけられるようにしていくか、競合優位性を築くか、これが2-3期出の大きなポイントと言えます。(1期は、ほとんどの場合、レクチャーで皆同じ数値で終了します。)

MG研修の標準パターンは、おそらく3期目が終わった時に、計画書の作成を行い、それをもって4期ー5期に臨む、というようなものだと思います。初めての参加の時は、この計画書を作るというのがすごく新鮮でしたし、かなり勉強になりました。

 

木村石鹸の場合は、実際の会社の経営計画も、基本的には、ここで学んだ逆算で組み立てる方法で作っています。

まず、G(利益額)を決める。F(固定費)の予算を策定する。G+F=Mが導き出される。ここから、このMの額を達成するためのP(価格)/V(原価)/Q(売上個数)をシミュレーションしていく、というやり方です。当然、そのQを行くためには、製造能力をあげないといけない、販売能力を高めないと行けないとういことになり、そこで固定費の計画を見直します。固定費の計画が見直されると、再度、必要なM額が変わるので、また計算しなおす。こんなことを繰り返しながら、最終的に折り合いのつく計画を作り上げていきます。

マネジメントゲーム

 

MGにおいても、この計画書は、所詮紙に書かれた「空論」「理想論」にすぎません。でも、こういうものを作ってゲームに臨むのと、何もなしで臨むのでは、実際、結果にも大きい差がでることが多いですし、また、多くの「気付き」が得られるのも、計画を作って取り組んだ方になります。

どうやったらその数値に近づけるんだろうか。なぜ、この数値が達成できなかったのだろうか、どうすれば達成できたのだろうか。そんなことを考えるだけでも、様々なヒントが浮かび上がってくるわけです。

MGをやると、ほとんどの人は、おそらく計画の重要性を痛感するのではないかと思います。そして、MGで作る計画書の作成方法は、そのまま現実の経営でも使えるものです。

 

■計画書なんて「机上の空論」いくらでも好きに作れる….

実は、まだ経営計画書を作ったばかりの頃、2014年の始めですが、ある幹部から、こんなことを言われたのです。「こんな計画なんか、excelの数値をちょこちょこいじって出来上がってるだけやし、作るのも楽チン。でも、実際、この数値を追いかける現場はねぇ、、、(大変だ)」

 

木村石鹸では、これまで大雑把な売上目標みたいなものは毎年期首に掲げられてはいましたが、細かい計画はまったくなく、またその目標も、期首に確認するだけで、あとは誰も追いかけず、目標対比なども把握せず、期末には、目標が何だったかを覚えてる社員もほとんどいない、というような状況がずっと続いてたのです。

僕は、そのやり方があまりにもアバウトで恐ろしかったので、もっと細かい計画に落とし込み、且つ、毎月、毎日のようにその進捗を追いかける、ギャップを把握するという仕組みに変えたわけです。その際に、言われたのが上記のような言葉でした。

 

確かに、その通りです。机上の空論なので、いくらでも数値はシミュレーションできます。いくつかの変数をちょこちょこいじるだけで、物凄く利益が出るようになったり、大赤字になったり。セルの数値をあーしたりこーしたり、いじってるだけでいくらでも数値は変えられる。それはその通りです。

でも、計画書があり、その計画書で考えたことを踏まえて、日々の業務に取り組んでいくと、そこには必ず気づきができてます。計画通りにうまくいかないもどかしいところがでてきます。それが重要だから、計画書を作っているわけです。

マネジメントゲーム

 

一倉定という有名コンサルタントは、「目標はその通りいかないから役に立たないのではなく、その通りにいかないからこそ役に立つのである」と言ってます。

こういうことは、おそらく言葉で説明しても、なかなか理解してもらうことは難しいと思うのです。実経営の現場では最低1~2年は、それをしないと、計画の重要性は腑に落ちて理解されないと思います。

それがMGであれば、2日の研修で、体感できるのではないかと思うのです。ここに座学ではない、経営ゲームを通じて体験することのMGの凄さがあるのではないかと思います。

 

■投資をしなければ儲けられない

MGでは資本金300円からスタートするわけですが、原料を仕入れたり、製造したりをやってるとあっという間に現金がなくなっていきます。

手元現金がどんどん減っていくので、恐ろしくなって、出来る限り安い市場で原料を仕入れ、研究開発や人や機械などにも投資せず、必要最小限の中で、販売を繰り返してなんとか凌いでいこうと考えがちです。

 

しかし、これをやってると、よほど運に恵まれて、すごいカードを引き続けない限りは、儲けることは不可能です。

儲けようと思うなら、売るための力をつけないといけないし、製造能力を強化しないといけない、製品の付加価値を高めないといいけない。どれも儲かる前に投資が必要です。キャッシュがなくなれば、高い金利を払って、銀行に借りてでも、投資をしないといけないのです。

これは経営者なら実際の経営の中で何度も味わうものですが、そうでもない限り、なかなかこれを実感することは難しいと思うのです。

 

僕は小さい頃に、親父が「うちはなんぼ借金あるか知ってるか? 〇〇〇千万も借金しとるんやで」と自慢げに語るのが不思議で仕方ありませんでした。子供ながらに借金は悪いものだと思ってましたし、なんでお金借りてまで会社をやるのかが理解できなかったのです。

自分が経営に携わるようになってから、先にお金が必要であることや、必ずしも借金が悪いものではないこと、投資しなければ、成長させるのは難しいこと、などを実際の体験の中で学んではきましたが、これは、実際に体験してみないと、なかなかしっかり腑に落ちて理解するのは難しいと思うのです。

マネジメントゲーム

 

ゲームの中では、それが体験できます。仮に、ゲームの中で投資をほとんどせずに、ぎりぎりで回していれば、おそらく4、5期目にはジリ貧になって、競争相手と何の勝負もできなくなります。ほとんどの場合、債務超過に陥り、実質、倒産ということになるはずです。

儲けるために投資をしなければいけない。

ゲームではこれが実感として理解できると思います。

 

しかも、すごくうまく出来てるのは、意思決定は自分の番が回ってきた時で、「意思決定カード」を引いた時にしかできない、意思決定できる回数は限られているという制約があることです。何に投資をするかは、その時々の状況、競合・市場状況、自社の置かれてる状況などによって変わります。 何からどういう順番で組み立てるかをゲームの中で、的確に判断して即断即決していかなければなりません。これも、このゲームの魅力の1つだと思います。

他にも挙げていくとキリがないぐらいに気付きがありますし、「経営」に対して感じる恐怖や期待感、目標を達成することのそう快感みたいなものも、ゲームの中に詰まってます。

いつかのタイミングでは、社内研修として、社員全員に取り組んでもらいたいなと思ってるんですが、ひとまずしばらくは、まず部長陣からということでスタートしてます。

新しいもの好き。ちょっと変わったものを生み出していきたいです。

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