木村石鹸

ブランドづくりの第一歩を踏み出した2015年

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はやいもので、もう2015年も本日が木村石鹸の最終出社日となりました。

新米チャンより、2015年の振り返りのエントリーを、というオーダーがあったので、ちょっとまとめてみたいと思います。

今年、会社として仕掛けたことの中で、すごく大きかったのは、新しい部門を作ったということです。

商品企画・マーケティング室という新しい部門をつくった

元々、木村石鹸には、営業部(コンシューマー向けと業務用分野向けに分かれる)、製造部、製品企画部、管理部という5部門があったわけですが、ここに「商品企画・マーケティング室」という新しい部門を作ることにしました。

きっかけは、このエントリーで、彼女が書いてる通り、彼女がうちに入社する、ということでした。

東京から大阪・八尾の老舗石鹸会社に社会人3年目の新米チャンがやってきた。

一人の社員のために、わざわざ部門を作るというのも変は話ですが、実は、もともとずっと考えてたことでした。彼女が入社するしないに関わらず、いずれかのタイミングでは、そういう部門は必要だろうとぼんやりと考えていたことだったわけですが、それが彼女の入社が肩を押してくれることになったということです。

幸いにも、定期的にヒット商品を生み出せてきたけれど…

弊社だけでなく、多くのメーカーが抱えてる悩みなんだと思いますが、商品のライフサイクル、つまり商品寿命ですが、これってどんどん短くなっています。

私たちのような規模では、市場が大きい台所洗剤とか、洗濯用洗剤みたいなジャンルに真正面から入ることはまず不可能です。なので、私たちはずっと用途を絞ったものや、今まで人々が気付いてなかった汚れや場所に注目して、ニッチな商品開発を進めてきました。

そして、幸いにも、木村石鹸では、この20年は、何年かに1回、そういうニッチ分野で、そこそこのヒット商品を生み出してきました。

湯ドロハンター」いまでこそ、この手の風呂釜洗浄、浴槽丸洗い洗剤は多いですが、多分、こういうタイプの最初は私たちが開発したものです。 「トイレノズルのクリーナー」。温水洗浄便座のノズルの汚れに着目して商品化したのも私たちが最初です。「冷蔵庫の自動製氷機の洗剤」、これも生協向けでベンダーさんと共同開発したものですが、私たちが最初に商品化しました。「トイレタンク」という箇所に注目して専用洗剤を開発したのも、私たちが最初だと思います。

世の中にはまだない、ユニークな商品を開発して、生協や通販会社などの限定的なマーケットで売上をつくる、というのが、私たちのビジネスの方法でした。

しかし、このようにして仮にヒット商品が生まれたとしても、その商品が売れて利益をもたらしてくれる期間というのは、年々短くなってきています。すぐに 真似されて競合商品が増えて価格が下がってしまうからです。1年もしないうちに似たような商品がいくつも登場してしまうのです。

簡単にコピーできてしまうもので競争してても辛い

結局、そういうアイディア商品や機能や性能みたいなものは、コピーが簡単なのです。

市場があるとわかるやいなや、競合となるような中小・零細メーカーだけでなく、大手メーカーも類似商品を出してきます。大手などは、その製造能力や販売能力を武器に、一気に価格を落としてきたりもして、そうなると私たちのような小さいメーカーは勝ち目がありません。
ネットの普及なども後押しして、類似品が出るスピードは以前にもまして早くなっています。 そう、先行者利益が取れる期間はどんどん短くなっていってるのです。

(もちろん、私たちが他社が出したものを真似るということもあります。そうやって、私たち自身も、ある意味、市場破壊の当事者だったりするのが、むずかゆいところではあるのですが…)

また、ニッチニッチを突き詰めていくというこのスタイルも、いずれ限界が来ると思います。ヒット商品を生み出し、それが稼いでくれる間に、また次のヒット商品を作り、という一発ヒットを狙うビジネスというのは、それはそれですごく不安定です。ある商品がヒットしたから、次の商品がヒットするとは限りません。

だから、ブランドづくりが必要だと考えた

そんなビジネス背景から、取り組んでいかないといけないことは、ブランドづくりだと私は考えてました。

「ブランドづくり」という言葉は誤解を生んでしまうケースもあると思うので、もう少し踏み込んで説明すると、要するに、ある人たちに、その会社やその商品を好意的、肯定的な感情で捉えてもらうこと、他と違うという意識を持ってもらい、継続的に利用したい、購入していきたい、応援したいというような意向を持ってもらうこと、端的に言ってしまえば、「ファン」という言葉になるのかもしれませんが、そういう「ファン」を増やすこと、となるでしょうか。

不特定多数の認知を獲得したいわけでもないですし、とにかく商品を高級なものにしたいというわけでもありません。自社のビジネスが継続できるレベルで最適な数の「ファン」を作りたい、そういう人たちと長期的な関係を構築したい、ということです。

人々があるブランドに感じる印象や感情といったもの、あるいは繋がりの意識みたいなものは、商品のスペックや機能とは違い、簡単には真似ができないものです。

ブランドを作るには、時間もかかるしお金もかかる、根気もいる。そもそも頑張ってもそれがうまくいくとも限らない。でも、だからこそ、それが作りだすことができれば、それは真似することが難しいものになり、それは会社にとっては資産となります。

そういう簡単には真似のできない要素を作り出していく、生み出していくこと、その取り組みを始めないとと考えていた時に、新米チャンの話があったわけです。

ブランドづくりのために新しい組織をつくるということ

ブランドづくりというものに取り組んでいくためには、今の組織を越えた機能や役割が必要だと考えていて、あれこれと悩んでた時に、入社前の新米チャンから、こういう部門を作ったらどうか、という提案を受けて、そうだな、と腑に落ちました。

なぜ、今の組織のままだと難しいと感じたか。
元々の「営業」「製品企画(この部門が主に研究・処方開発)「製造」という役割だと、「営業」は基本、確実に売れるもの、すでに販路があり、例えばOEMなどで買い取ってもらえるものの方がまとめて売りもたつので優先しがちです。「製品企画」は営業からのオーダーでの処方開発がメインになります。自身でオリジナルのものを開発するといっても、この部門はどちらかというと研究・開発が主体なので、マーケティング側面を考慮しての商品開発までは行えてませんでした。

この状態で、例えば、マーケティング担当を営業部に入れる、製品企画に入れるだけで、ブランドづくりという活動が行えるのか、加速させることができるのかというと、疑問でした。どうしても既存ビジネス、お客さんの支援やサポートがメインになってしまい、自社商品開発やPRは後回しになってしまうだろうという懸念があったわけです。

私は、ブランドづくりのためには、自身での商品開発とマーケティング、そして、開発した商品を自ら販売していく直販力のアップということが欠かせない要素ではないかと考えていました。 自身で開発した商品を自身で販売する、自身で語ること、直接ユーザーとの関係をつくる、それをやらないかぎり、既存の販路だけでのビジネスではブランドづくりは不可能だと感じたのです。

そこで、営業部の中で、商品のパッケージや企画よりの仕事をしてたものを部門長として、製品企画からは開発の人間2名、そしてもともと営業部内にいたネット担当を集め、ここにマーケティングや広報を担当する新米チャンを加えたメンバーで、新しい部門を立ち上げることにしたわけです。

これが、この部門を設立した背景や意図です。

部門ができて6ヶ月。まだまだ始まったばかりだが

バックグラウンドが全然違う、職種的にも違うメンバーが集うこの部門は、2015年7月に本格スタートしたので、6ヶ月ぐらいが過ぎたでしょうか。

まだまだ試行錯誤の感はありますが、これはこれで面白い取り組みがチラホラ始まってきたり、また色んな職種の人が同じ場所に集まるからこそのアイディアが生まれたり、スピード感があったりして、私個人としてはけっこうワクワクしてたりします。

本格的なブランドづくりとかは、来年以降より本格化、加速していくと思いますが、今は、そのための仕込みやら、仕掛けやらを着々と進めてる段階でしょうか。

私は、もうかれこれ20年以上前、大学の頃に、大学サークルの先輩や仲間とベンチャー企業を立ち上げた経験があります。立ち上げから5年ぐらいは、ほんとに社員も少なく、分業もできなかったので、一人一人がやることが凄く多く、かなり大変だったのですが、それはそれで今思えば楽しい経験でした。

今のこの「商品企画・マーケティング室」は、まさにそんな立ち上げ当初のベンチャーに似た雰囲気を持ってるなぁと感じます。 とりあえず、1人1人がやらないといけない領域は大きく、雑多な業務をやりつつ、目標に向かって各自が考えて動いてるという感じでしょうか。

新しいシリーズ商品を開発しても、まず最初の販路が自社通販サイトだけだったりするので、今はすごく小ロットの製造で間に合います。これを既存の製造部のラインでカバーしてもらうのが難しい場合は、この部門のメンバー自身が充填したり、箱詰めしたりしてたりします。
商品の写真撮影も自前でやったり、傍からみたら、それ非効率やろ、と言われそうでもありますが、できることは自分たちでやるというのも愉しいものです。自分たちが愉しんでないと、人を惹きつけるものなんて生まれないと思うし、いけるところまでは、それで色んなことにチャレンジして、愉しんでいければいいんじゃないかと思ってます。

マーケティング室。

全員じゃないけど、新設部門のメンバー。

来年以降は、より具体的な形となって、この部門の活動の成果も現れてくると思います。

と、気づいたら2015年の振り返りではなくなってしまってました。失礼。
では、よいお年を。

新しいもの好き。ちょっと変わったものを生み出していきたいです。

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